冒険の旅:Lethe編(8)
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集金も飽きたし、帝国教会への興味も薄れてきてしまった。今日をEbonheart最後の日と決め、ぶらぶらと町を見て回ることにする。気が向いたら、いつかまた戻ってきて寄付集めをすることもあるかもしれないけれど。
よそ者であることは隠しようもなく、理由なく卑屈になるのもばかばかしい。寄付ついでに城に乗り込み、お偉いさん方と話をしてみた。無礼なのかもしれないが、わたしはよそ者だ。ここのルールなど知らない。多少覚悟を決めて城門に向かったが、すんなりと通してもらえた。拍子抜けする。 Ebonheartを納める公爵 Vedam Dren と会って話をすることまで許されたのには驚いた。 守りに自信があるのかもしれない。彼の弟、Orvas Drenが Balmoraでやっていることを知らない者はいない。刺客がこの兄に差し向けられることだってあるだろうに。公爵も実の弟はやはりかわいいのか、悪を知りつつも裁けずにいるようだった。
公爵の間にはおつきの者から施設軍隊、帝国兵までさまざまな家臣たちが控えていた。怪しい動きをしたらたちまちグサリとやられてしまうだろうな。
広間の入り口を守っている衛兵長が言うには、Morrowind でもっとも優れた魔法の鎧、君主の鎧(Lord's Mail)が盗まれ大騒ぎになっているということだ。騒ぎになっているならこんなところにつっ立っている場合ではないと思うが。
わたしはなんだかその鎧のことが気になってしまった。報酬がほしいわけではない。鎧目当てのはずもない。どうやら・・・・・・わたしは面倒なこと、危ないこと、いわゆる冒険に首を突っ込むことに慣れつつあるようだ。これが本当のわたしの性格なのかもしれない。危険とわかっていても、理由もなしにそちらに足が向く。
衛兵たちから話を聞いた結果、鎧が失せると同時に、一人の若い兵が姿をくらましたという。町の南にある洞窟が怪しいようだ。Balmoraのときと同じ戦法が通じるかどうか。とりあえず洞窟に入ってみることにした。
せっかくの仕立てのよい服だが、洞窟に入った時に塩水と泥にまみれてたちまち汚れてしまった。戦果が洗濯の必要な衣服だけ、というのでは割に合わない。あわてて陸を探し、這い上がった。半ば水没した洞窟。犯人がここを格好の隠れ家とする可能性は十分にある。
洞窟の中は湿っぽく、薄暗かった。わたしが生肉の塊にしか見えないのだろうか、巨大なネズミが歯をむき出して襲い掛かってくる。杖で叩き落したが、細かい傷を負ってしまった。
洞窟の奥に、人影が見えた。Redguardの男。遠目にもはっきりと魔力の輝きが見える。男が Lord's Mailを盗んだ兵であることは間違いないようだ。それほどまでに手に入れたい、人の欲を駆り立てる鎧なのだろうか。ならばこのままなくなったことにしておいた方が安泰かもしれない、などと不謹慎な思いがよぎる。
さてどうしようかと策を練っているうちに、男はこちらに気がついた。武器を振りかざし、全速力で向かってくる。
「誰だ?この鎧は渡さん、渡さんぞ!」
-呪文が間に合わない!ざくりと音がして、肩に剣が食い込んだ。焼かれるような感覚が傷に走る。傷は痛みではなく、熱となってわたしの体に伝わってきた。
後退しながら、Frost Atronachを召喚する。出血がひどい上に魔力まで搾り出されるのだからたまらない。このまますぐに死んでしまいそうだ。残った魔力で、かろうじて一度だけ治療の呪文を唱えることができたため、何とか黄泉の河はまたがずに済む。
男はそれほどの腕前ではなかったらしく、すぐにFrost Atronachによって倒された。
男に恨みはないが、先に手を出したのは彼だ。わたしは自分の命が、まだ、惜しい。こんなところでは死にたくない。だから、しかたない。誰にともなく心の中で言い訳をしながら、わたしは男の装備していた鎧に触れた。まだ暖かい男の死体を守るかのように、強力な魔法の放つ独特の光に手のひらが照らされる。
死者には鎧は要るまい。正しい持ち主のもとにこの鎧は帰るべきなのだ。留め金をはずし、鎧をバックパックに入れて、わたしは再びEbonheartに戻った。洞窟のもうひとつの出口が、Ebonheart城と隠し扉で結ばれていたのは意外だった。小者の兵一人でこのような仕掛けを作れるはずがない。この男は単なる囮、または捨て駒で、鎧を盗もうと企てた者は城の内部にいるのかもしれない。
鎧を持ち帰り、衛兵長に見せると彼の顔は輝いた。「よく見つけてくれた、この公爵の守りにつく者にしか許されぬ銀の尊い鎧をやろう。さあ、Lord's Mailをこちらへ!」
わたしはわが目と耳を疑った。衛兵長はあつかましくも、Lord's Mailを手に入れるが早いか自分で装備してしまったではないか。しかし、公爵をはじめとするほかの者は、衛兵長のこの行いにこれといった反応を示す様子もない。Lord's Mailはこの衛兵長の物なのだろうか・・・・・・・?
この男がすべてを企てたのかもしれない、という邪推が沸き起こる。しかし証拠はなく、わたしは人を裁くほど立派な存在でもない。2度、言われるままに人を裁いてよくよく気づいた。ただ、黙って成り行きを見つめ、それに納得するしかない。少なくとも今は。
神の心理を解かない即物的な帝国教会。悪を見逃し、目先の平穏に満足しているEbonheart城。釈然としない思いを胸に、わたしはこの南端の町を後にした。悪印象ばかりが残る。もう、しばらくここを訪れたくはない。銀の鎧はその辺の武器屋に叩き売り、ポーションなどの旅の道具に変えてしまった。