冒険の旅:Lethe編(1)

こっちはネタバレ全開です。なお 会話にバリエーションを持たせるダイアログを片っ端から入れています。

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わたしの名はレセ。冥府を流れる河の名を持つ。

この名が、顔も、名前すらも知らない両親によって付けられたものなのか、わたしを拾い上げた司祭によって付けられたものなのか、いまだにわからない。普通に考えれば、司祭は死者の世界にちなむ名など付けないだろう。誰がつけたかなんて、わたしにとってはどうでもいいことだ。ただ、不吉な名だと思った。わたしの、光の差すことのない人生を暗示しているようだと思った。暗い石牢で、手枷足枷こそはめられないものの、自由を許されない生活を送ってきた。生まれてきたこと自体が罪なのだ、と言われた。

ある日、突然船に乗せられた。理由は教えてもらえなかった。船にはJiubという名のダークエルフも乗っていた。この男も幽閉の身か、奴隷か、どちらかだったのだろう。わたしたちはMorrowindに向かっているのだと教えてくれた。そこがどこなのか、わたしにはわからなかった。そこに移されたからといって何が変わるわけでもないだろう。

船の中で、夢を見た。女性の声がした。赤い砂嵐が見えた。何かをせよというように、その声は何度もわたしに訴えかけてきた。そこで目が覚めた。

岸に着き、わたしだけが下ろされた。Jiubは来なかった。おかしいと感じたが、背中を乱暴につつかれ、衛兵に船の外に出された。

皇帝陛下がその慈悲によって、わたしを特別に釈放してくださったのだという。何のために?わけのわからない暗号で書かれた書類を持たされ、Balmoraに行けと苦虫を噛み潰したような顔の役人に言い渡された。

ばかばかしい。破り捨てようかと思ったが、なぜか思いとどまってしまった。役人のくれた金で、ぼろぼろの衣服を覆うローブを買った。初めて、金を使い、着るものを買った。

着いた先は Seyda Neenといった。Morrowind というのはもっと広い、地域の名なのだという。Seyda Neenは小さなみすぼらしい町だ。だが、わたしよりはみすぼらしくはない。

町を一通り回ってから、思い直して桟橋に戻るともう船は出てしまっていた。次に船が来るのはいつなのだろうか。そのときは、誰かみじめな生き方をしている人間をまたつれてくるのだろうか。

皇帝はきっとおかしな人間なんだろう。

こんな小さな町でも、お役所の管理下にあるらしい。きちんと税が集められるのだという。その税の集金を担当している役人が、行方不明になったと聞いた。みな男を快く思っていなかったらしく、心配する声は聞かれなかった

誰にも好かれない、かえりみられない男。自分と重なるものがあって、少し興味を持った。町の外を探し回ると、男は町外れの小島の岩陰で、冷たくなって横たわっていた。

事件は程なくして解決した。わたしが、解決に手を貸した。町の住民の一人が彼を殺害したのだ。わたしは彼を殺した。女の腕に人を殺す力はないが、わたしには召喚の業があった。人に見せることは少ないが、よほど疲れてでもいないかぎり、念ずればそれに答えて何かが現れた。たいていの場合はふわふわと揺れる老人の霊だったが。現れるのはいつも同じ霊で、なぜかどことなく自分に似ていると思った。

わたしは彼の話を聞いた。甘い汁を吸い、町の人々が苦しむのを見て見ぬふりをし続けたあの男が、心底憎かったと彼は言った。俺があいつを裁いたんだ、とも言った。でもわたしは彼を殺した。今度はわたしが彼を裁いた。人を殺すのは、どんな理由であれ許されないと思ったから。釈放の時に立ち会った役人から、犯人を見つけて制裁を加えることができたなら、報酬を払おうといわれていたから。誰からも疎まれていた男だと思ったのに、たった一人、もうこの世にいない男を思って涙する女を見てしまったから。

なんだ。あなた 愛されていたんじゃない。わたしとぜんぜん違う。
死体から取り上げられた、役人のものと思われる指輪を灯台で待つ女に渡した。この指輪が、今となっては彼を思い起こさせてくれるたった一つのものになった、と女はまた涙をこぼした。愛するって、苦しいことなのだろうか。失うって、心が痛むものだろうか。何も持っていないわたしには それがよくわからなかった。

ここにいる必要もない。わたしは役人から渡された書状を持って町を出た。乗っていかないかい、旅がずいぶん楽だよと旅ノミ使いに声をかけられたが断った。自分で大地を踏みしめて、自由を味わってみたかった。自由なのは今だけかもしれない。Balmoraという町にのこのこ行けば、ひょっとしてまた囚われるのかもしれない。それでも、不思議といってみようという気になった。2日や3日でつけなくてもかまやしない。危険かもしれないけれど、前の暮らしよりはずっとましだろう。今の、この状態には変化がある。日の光がわたしを照らしている。

町に行こう。着いたら、また服を買ってみたい。