冒険の旅:Lethe編(9)

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Eboheartに失望したわたしは、夜明けに町を離れてまたBalmoraにもどることにした。理由は簡単。ほかに行くところがないからだ。わたしには帰る家がないし、身元を保証するものもない。今は唯一、Caiusがわたしにかかわりのある人間だ。だが彼も the Bladesであることを隠している以上、おおっぴらにわたしをかばってくれることはないだろう。わたしも彼を信用して協力しているわけではない。

戻るとCaiusは相変わらずきちがいじみたなりをして待っていた。裸だ。ずっとSkoomaをふかしていたのか、ベッドの下には汚いパイプが転がっている。皇帝付きの諜報官というのはずいぶんご立派な身分と見える。これでまともな仕事ができるのだろうか。彼はわたしにいくらかの成長を見て取ったようで、簡単な使命を任せることにしたようだ。Morrowindの歴史も、文化も、地理感覚も何もないわたしを見かねてか、まずは地元の戦士ギルドへの使いを頼まれた。

だが簡単と思えたその使いの内容は物騒なものだった。2つの秘密教団についてたずねて来いというのだ。なんだかわたしは 帝国国教団に所属してから、教団というものによくない印象を持ち始めている。さらに「秘密」で「邪悪」なものときた。こういった話にはできるだけかかわりたくはないが・・・

わたしはその時眉根にしわを寄せ、見るからに不服で気がすすまなそうな顔をしていたのだろう。Caiusは本の積み重なった箱の上から一冊の書物を取り出して、「これはこの地の歴史をしるした本だ。簡単なものだから読めるだろう」とわたしに手渡した。さらに、これを読んだら次を探すといい、と本の題名を教えてくれた。自分の財産というものをはじめて持てるようになったわたしは、どうももらいものや報酬に意地汚くもすぐ目が行ってしまう。わたしの服、わたしの靴、わたしの本・・・わたしだけのものを手に入れることにとても魅力を感じる。わたしは自分の欲を意識し始め、欲に従うことを楽しく思っている。

勉強する機会などわたしにはほとんどなかった。今思えば、あんな牢暮らしでなんとか字が読めるようになったのはずいぶんと運のよい話だった。主に、本をくれたことについて礼をいい、わたしはCaiusの家を出た。初めての指令には、一見重要そうな内容であるにもかかわらず、ずいぶん長い猶予が与えられているようだった。Caius は「情報を得たらまた戻ってきなさい。では、行きなさい」とゆったりと余裕の笑みを浮かべている。そうか。わたしの首には目には見えない縄が付いていて、その先は皇帝の手にしっかり握られているのだな。おそらく、監視もされているのだろう。まあいい。わたしの道は、今はこれでいい。不満はない。


戦士ギルドは川を挟んだ西地区の中央にあった。こちらは住宅地の東地区よりずいぶんにぎやかな場所だ。地階の訓練道場に、目的の人物 Hasphat Antabollisはいた。この男に秘密教団の情報をたずねればよいのだ。ところでここBalmoraは、Seyda Neen や Calderaとは違って地下に部屋を作ることが多いようだ。無骨な石造りの家は、Balmoraの名家 Hlaaluの家、または Dunmer種族の伝統的なスタイルなのだろう。室内はタペストリーや花でそれなりに飾り立てるようだが、家の外側に気を回すつもりなどさらさらないらしい。おかしな話だ。

さて話がそれたがこの Hasphat、きちんと服を着ていた。安心した。Caiusの紹介する男だから、どんなおかしな男だろうかと少なからず心配をしていたのだ。取り越し苦労に終わってよかった。それどころか Hasphat は戦士ギルドに身を置きながら、Dwemerと呼ばれる失われた種族の文化や、Morrowindの歴史についても研究しているという。体力だけが自慢の単純な男ではなさそうだ。いくつか DwemerとMorrowindのことについてたずねると、彼は親切にいろいろと答えてくれた。「ついでにこれもあげよう。読むといい」と Morrowindの歴史にかかわる本を一冊くれた。 これで指令の合間、またそのあとの楽しみが増えた。本を2冊もらえただけでもずいぶんな収穫に思えた。

だが体も頭も鍛えているだけに、一筋縄ではいかない男でもあった。わたしが話を切り出すと、彼はそれを交わしてしまうばかりでこちらの望む方向にさっぱり話を持っていけない。

「Antabolis殿。本日我が上官 Caiusにここにわたくしがよこされた理由なのですが」
「わかっているよ。でも先に、私の願いをひとつかなえる手伝いをしてくれまいか?Lethe君」
「ですが、わたしはあなたに2つの秘密教団についての情報を分け与えていただくように・・・」
「もちろんさ。だが、情報が欲しいなら、ひとつだけ協力してくれまいか?ぜひ君に頼みたい」

押し問答になってしまっては、わたしに勝ち目はない。人と自由に話すようになってまだ10日も経っていないのだから。口のうまい Hasphatの言葉にどんどん押され、わたしははいと返事をするほかなくなってしまった。彼の望みは Balmoraの近くにある、とある Dwemerの遺跡に潜入し、Dwemer puzzle boxという不思議な古代の品を持ち帰ってくることだという。わたしにはこの仕事が自分にとって楽なのか、大変な苦労になるのか、皆目見当が付かなかった。ただ、Hasphatの望みどおり承諾の返事をして、手ぶらで戦士ギルドを去るしかなかったのだ。だまされているような気がする。いや、こき使われているような気がする・・・・・・


雑貨屋に寄り、ポーションを買い揃えた。魔術師ギルドに寄って、ギルドの支給品である安ポーションももらっておいた。Ajiraがもっと頼みたいことがあるとぶつぶつ言っていたが、あいにくわたしの体はひとつしかない。なるべく早く戻ると口先だけの約束をして、Balmoraを発った。

昼に出て、歩いているうちにたちまち日は傾いてきた。山脈のふもとに沿って歩いていると、夕焼け空に浮かぶおかしな生物を見た。なんだろう。Silt Striderにしては胴が太い。

・・・・・・迷った。

地図を見ると、とんでもないところに来ている。むしろ、Calderaに近づいてきてしまった。逆方向か。地図と道標だけでは、わたしは正しい方向に進めないようだ。自分の方向感覚を疑い始める。

大きな橋にさしかかると、奇声を上げて禿げ上がった男が襲い掛かってきた。骨ばかりの生ける屍を召喚して襲ってくる。気狂いか。あまり強くはなかったので、霊とダメージ呪文で黙らせた。

2日経った。まだ、遺跡は見えてこない。今歩いている方向は正しいのだろうか。地図を見た。わからない。地図を回してみた。余計わからなくなった。道に戻れば何とかわかるだろうが、その肝心の道はどこにあるのか。それすらわからなくなった。わたしは今、長ったらしいスカートをたくし上げ、深い草むらを足でこぎながら進んでいる。

夜も更け、月が頭上まで上がってくる時間になってしまった。しょうがないので寝た。進む方向のことは、目覚めたら考えよう。安全を確認し、大きなキノコのかさの下で体を横たえた。