冒険の旅:Lethe編(4)
物語中の「 」で囲まれたせりふは、基本的にダイアログの意訳です。極力余計な尾ひれをつけません。ただし、話の流れを理解しやすくするために、多少語を補ったりすることはあります。また、冗長になるのを防ぐために2-3のダイアログをまとめ、一つの発言として書くこともあります。
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「そうか・・・・・・ ではLetheよ。私は君を皇帝に仕える直属諜報組織、the Bladesのメンバーとして迎えねばならない」
寝言にしては愉快なことを言う。わたしは Caiusの言っていることがわからなかった。
「何ですか。その the Bladesと言うのは」
「皇帝の目となり耳となる直属組織だ。君は the BladesのNoviceランクの一員となる。わかりやすく言えば我々はスパイだ。私が君の上司、Spymasterとなる。君は私の課した任務に従う。ここまではいいか?」
どういうことだろう。わたしが持ってきた手紙には、「この者を新たなスパイにしろ」とでも書いてあったのだろうか。
「そのとおりだ。君さえ心の準備ができていれば、我々は君を迎え入れる」
少し時間をください、と言って考えた。後回しにしてもいい結果にはならないだろう。その場で結論を出そうと決めた。危害を加えるつもりはなさそうだ。皇帝はわたしに何らかの利用価値があると考えて、Morrowindにわたしを放し、Caiusの元に向かわせようとしたのだ。逃げるかもしれないのに。しかしわたしはのこのこと、皇帝の思惑通りCaiusに会いに来た。きちんと忘れず親書までもって。ここまでやっておいて、「お断りします」というのもばかばかしい話だ。なぜ皇帝がわたしを選んだのか。真の目的は何なのか。いずれわかるかもしれない。理由を知りたい。わたしにはある程度の自由は許されるだろう。それなら、ここへ来る前の生活よりははるかにましだ。わたしは自由が欲しい。外の空気と日の光が、大地を踏みしめる時間が欲しい。・・・それと、また新しいきれいな衣装を買うだけの、少しの金貨が。
「わかりました。受けます」
こうしてわたしの居場所と、なすべきことは決まった。
しばらくは人の決めた道を歩いてみよう。---
スパイがスパイと悟られてしまったのでは意味がない。まだ経験が足りないことを指摘した(当たり前だ)Caiusは、わたしに二つの助言をくれた。一つは、カモフラージュとしてどこかのギルドに入ること。もう一つは、技術を磨くこと。彼が予定している最初の使命を任せるには、わたしはまだ頼りないのだそうだ。
ここまで来る途中の町で、余り考えずに Imperial Cult(帝国教会)に入ってしまった。聞くところによると、特に所属する団体の数に制限はないと言う。Imperial Cultでも他のギルドに入るな、とは言われなかった。もらった小冊子だったか、途中で買った帝国教会の本にはTribunal Templeとはいい関係とは言えない と書かれていたが。とりあえず、この辺の関係を考えて入るギルドを決めよう。やるからにはまじめにやりたい。本を読むのは好きな方だし、時間も十分あるようだ。わたしは書店と雑貨店で参考文献を集めることにした。
Imperial Legionが帝国教会を守るように、Dunmerの戦士一家 House Redoranが Tribunal Templeを守護しているらしい。帝国とDunmer文化にはやはり多少のいさかいと、理性だけでは解決できない反目があるようだ。Imperal Cultに入ってしまっている以上、この二つの組織にも同時に身を置くことはさすがにまずいだろう。この二つを選択肢から取り除く。だが 魔術師一家のHouse Telvanniは少し興味をそそられる。魔法をじっくり学んでみたい。だが、場所がよくわからない。とりあえずはBalmoraにも支部がある Mages Guildに行ってみることにした。Great Houseの一つである Telvanniはいかにも よそ者を激しく嫌いそうだが、Mages Guildは大丈夫だろう。
案の定、Mages Guildはすんなりと入会を認めてくれた。予想以上にDunmer以外の種族が多いので、安心する。この中にはわたしと同じ「よそから来た者」もいるかもしれない。
新人の訓練を担当するのは Khajiitの魔術師Ajiraだ。だがAjiraは同期のBosmerの魔術師、Galbediaとどちらが早く昇格できるか競い合っている最中で、わたしにかまっている暇はないらしい。レポートを作りたいからキノコの標本をもってこい、やれ花の標本をもってこいと魔法の勉強にはならないお使いばかりを言いつける。困った女性だ。だが、悪気はないのだろう。
Ajiraはまだまだ忙しそうだ。待っているのもしびれが切れる。魔術の素質、特に召喚についてはそれなりの腕があるという自負がある。呪文をギルドから買って、しばらくは独学でやってみることにした。ここでまた、Caiusからもらったばかりの金をほぼ使い切ってしまう。
壁に魔術師の帽子が掛けられていた。ギルドメンバーは自由に持ち出し、着用してよいそうだ。紫色の帽子を一つとり、かぶってみた。
・・・似合わない。
帽子をベッドの上に起き、立ち去った。街中で突然、「Fort Moonmothのお偉いさんがあんたを探しているわ」と声を掛けられた。なぜわたしのことを知っているのだろう?砦は帝国軍の詰め所兼、国教会神殿の役割を果たす。Caiusが砦の幹部らと通じ合っていてもおかしくはない。早速新人スパイにさせたい仕事がおありと見える。この町人も案外、町人を装ったスパイかもしれない。
情報の出所は気になったが、とりあえず行こう。日没が近いが、砦まではすぐだ。話を聞いてからすぐ街を出て、日が沈んだ直後には砦に到着することができた。よそ者が珍しいのか、警備中の衛兵たちがじろじろ見る。わたしも負けずにじろじろ見返してやった。これぐらいいいだろう。
砦の中は思った以上に広く、衛兵よりも商人が多いくらいだった。帝国から輸入した品物の販売や、官給品の在庫管理を行っているらしい。彼らも帝国本土からMorrowindに来たのだから、同じよそ者と言えなくもない。もの珍しさにあれこれと品物を見せてもらったが、戦士のための品ばかりだった。Fort Moonmoth の中の帝国教会設備は申し訳程度のもので、呪文やポーションなどのサービスは整っていない。だが、砦の職員から聞くことができた話は興味深く、よい収穫となった。本格的に教会のために仕えるなら、Ebonheartへぜひ赴いて、lay servantの資格を得ることが必須なのだそうだ。やはり、これは早いうちにEbonheartに行って見る必要がありそうだ。BalmoraにずっといてもCaiusは経験が足りない足りないとばかり言うし、じっとしているスパイと言うのもみっともない。熱心な慈悲ある信者の振りをしつつ、南方面の観光旅行を楽しもう。
そうのんきなことを考えながら、当のわたしを探しているとか言う男、Larrius Varroに会った。彼はこの砦の兵をまとめ上げる役目を負っている。中年をやや越えているのか、顔にはしわが刻まれ始めているが、たくましい筋肉に衰えは感じられない。重い鋼鉄の鎧に背がゆがむ様子もない。
「わたしがLetheです。出自と所属はご存知ですね。ご用は何ですか」
ごつい体格の割にはロマンチストなのかもしれない。Varroはいきなり聞いている方が恥ずかしくなるようなたとえ話を始めた。かいつまんで言うとこんな内容だ。
「昔々、悪い判事がいました。お金を取って、犯罪者の刑期や罰金を少なくしてしまう悪い人です。誰もが彼が悪いことを知っていましたが、悪い判事の悪事を証明できる人はいません。たとえ証明できたとしても、悪い判事には悪い、強い仲間がいて、証拠なんかきっと悪い仲間に負けてしまいます。
時を同じくして、法律をよく守るよいお役人がいました。お役人は法律が人々を幸せで安全にしてあげられると信じていたからです。でもお役人は悩んでいました、犯罪者たちを捕まえる前に、悪い判事が彼らを逃がしてしまうからです。
長い長い間、よいお役人は悩み、言いました。『どうしよう?悪い判事には強い仲間がいて、私は彼らを捕まえられないよ』しかし、よいお役人は気づきました。『そうだ。待てよ。悪い判事に賄賂を渡している悪いやつらはどうだろう。やつらには強い仲間なんかいない。そして悪い奴らがいなくなれば、もう悪い判事は賄賂を受け取れないぞ。』
さらに、よいお役人は、悪いお役人にお金を渡している悪いやつらも、犯罪者性質であるに違いないと考えました。そこでよいお役人は、悪いお役人に賄賂を渡している悪い奴らを、追い払ってしまえればいいんだと気づいたのです。それも永久に。」
話にはたっぷり10分ばかりかかり、わたしはうんざりした。童話のような内容に、幼稚な主語目的語の連呼。正直に言って、これ以上話が続くなら、「もう結構です。失礼しました」と言って帰ろうかと思っていたところだ。だが実にいいところで(悪いところかもしれない)話は終わった。
「それで その『悪いやつら』をどうにかして来いとおっしゃるんですね」
「そうなんだ。どうにかして欲しい。ちょっと血を見るかもしれないが」
「ちょっと血を見るかもしれないんですね。そうですか」
「この大変な仕事を見事こなしてくれれば、皇帝からの贈り物を渡そう。なんだかわからないし、どこにあるかもわからないのだがね。きっとびっくりする、すばらしいプレゼントだ」
どこまでが本気の話なのか、まるでわからない。いらいらする気持ちを隠しきれなくなっていた。依頼自体は困難を極めるもので、どう考えても今のわたしには無理だ。5人殺せと言われてはいはいとやる人間はそうはいない。Varroは自分で行って連中をかっさばいてくればいいだろうに。
それでもわたしは 「調べてみます。可能ならば実行します、いつになるかわかりませんけど」と返事をした。どうせわたしはよそからやってきた使い捨てのスパイに過ぎないのだ、彼らから見れば。どれ、修行をしようか。魔法の腕を磨こうか。使い捨てのうす汚いよそ者が、どこまでできるか見てもらおうじゃないか。 自分の血を見て床に転がる結果に終わるかもしれないが。 だめだったら?逃げるという選択肢もある。やってみなければわからない。